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一律の給付カットは、従来言われてきた小さな政府の流れと軸を逸にする施策だが、そこにストップがかかったという状態は、まさにアメリカ、イギリスで惹起されている方向と大体同じだと思われる。小さな政府を求める流れは、一様に一律の給付カットをする方向できたが、そこにストップがかかったということで、どちらかというと所得の高いグループは従来通りの小さな給付、切りつめ過ぎてしまった平均以下の階層には何らか手当をして、軌道修正を今やろうとしているのが実態である。

 

4 スウェーデンの動向

 

スウェーデンは1994年に、事実上基本的な考えを整理した年金改革の法律を成立させており、98年の選挙の前に一度微調整を行なったが、99年からの実施を更に1年延期して実施を2000年からに繰り下げている。ただ、極めてドラスティックな、どちらかという小さな政府に向かう流れの整理を行なったということである。年金保険料を長期にわたり固定し、給付は事実上給付建てから換金建てに計算法式を変えている。これも革命に近いものである。スウェーデンでも年金受給者の数は増えており、年金保険料18.5%を長期固定で上げないスタイルである。

一般財源の投入は2つしかなくて、1つは、スウェーデンは徴兵制をとっている国なので、徴兵期間に関わらず、年金保険料相当を一般財源に補填するし、育児休暇中の人達が基本的に保険料を納めていなくても納めている人と同等にみなし、財源の不足分を一般財源で補填する。もう1つは、最低保障は年金として最低限シーリング支給するし、それに満たない人達に税金から財源補填をする。これらが一般財源投入の3つのルートであり、徴兵された期間、育児休業期間、最低保障に関わる部分を国庫が負担し、後は保険料で賄うということである。

しかし、保険料は上げないと言っている。ただ年金受給者は増えているわけでるから総体的に言えば年金給付対賃金費が小さくなってくるという調整をスウェーデンでは、国民全体で受け入れたということである。これも大変なもので、自分の寿命が長くなれなった分だけ年金給付減に反映させる方法である。掛金建てに給付を変えてしまうのはまさにその通りであり、ドラスティックな体制を受け入れたということである。

 

 

 

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