1999年からスタートするはずであった給付を減らしていく調整は、現在停止している。なぜ、社会民主党は一律の給付カットに反対したかというと、ドイツの年金は定額部分が無い制度で、所得に比例する年金だけである。要するに、所得の高い人は高い年金が支給され、所得の低い人は低い年金が支給される。所得が高くても低くても年金のカット率は全く同じである。長生きをするようになり、それに伴い行われる年金カットが所得の高い人でも低い人でも全く一律で同じやり方であれば、所得が高く年金額が高い人は支給額が少しダウンしても生活には困らないが、支給額の低いグループが同じようにカットをされると、ますます老後生活に支障が出る。生活保護基準等々、他との比較が大いに問題なる。女性グループとか、理由があって低賃金に甘んじている人達の反発が強かった。
自分達は営々と保険料を掛けてきたのに、保険料を掛けないで生活保護をもらっても結果的には老後生活は同じだというところまで、下がってしまうではないか。こういう年金に保険料を掛ける気にはならないというのが社会民主党支持グループの反対の論拠であった。
一律に支給額を下げると、支給額が低いグループは生活保護基準以下に下がってしまって保険料を掛ける気持ちにもならないという反発になった。それが一大争点となって女性と賃金の低いグループがキリスト教民主同盟の提案を葬った。現在は、社会民主党政権が成立し新しいシステムを考えている最中であるが、どうなるかよく分からないのが現状である。政権交代後一年が経ったが、具体的に社会民主党がどういった提案をするかは基本的には今もって分からない状態である。
それから前から約束されていたことだが、1999年4月から年金保険料を下げるということになっていて、当初は1%下げるということになっていたが実際下がったのは0.8%で、20.3%の保険料が19.5%に下げる調整を1999年4月から行なっている。
ドイツの年金受給者は増える一方で、年金保険料を下げれば当然財政を圧迫する。ドイツは積立金のない国であるから、財政的に問題となるので、当然給付を切りつめる約束であったが、それが止まってしまったわけだから、新財源を入れない限り保たない状況にある。新財源としては、1998年の1月に付加価値税の税率を1%上げた。付加価値税15%であったが、昨年からは16%になっている。1%上げた分を一般財源化せずに、総て年金財源に振り込みという方法である。
1999年の4月に年金保険料を下げたが、それでも財政的に辻褄が合わず、エネルギー、電力ガスあるいはガソリンに対する新たな環境税等々を新たに増やし、そこから入ってくる新財源を年金改革に振り込む形の調整をとって、とりあえず動き出したということである。
ドイツでは、年金保険料は上げず下げたということであるが、これはスペイン、ポルトガル、スイスなど他の国でも実施されていることである。ドイツはとりあえず一律支給カットにはストップがかかった状態であるが、新しい方向は定かではない。