1 イギリスの動向
イギリスでは、1998年の12月に年金改革に関するグリーンペーパーが公表された。正式名称は「new contract for welfare:partnership in pensions」。グリーンペーパーはブレア政権が考えていることを率直に語ったものである。それを元に国民全体に意見を求め、出されたいろいろな意見を元に法案作成のためのホワイトペーパーが作成される。
イギリスの年金制度を整理すると、基本的には日本と同じで、所得の高い人も低い人も定額の基礎年金を受ける。次に所得に比例する年金が二階に乗っている。これは公的年金で行なう。サッチャー首相時代の行なったことは、この二階建ての給付について、賃金スライド等は一切しない、給付の改善は物価スライドだけにとどめることを行った。
イギリスでは、80年以降実質賃金が上がらなかったので年金財政はかなり改善され、賃金上昇率と物価上昇率を比べると、物価上昇率の方が低かったので、年金給付の対賃金の割合が徐々に落ちていった。物価スライドなどで実質購買力は確かに維持された。
現役の人達の生活水準の比較から言えば、総体的に下がった形での調整しかしなかっと言うことで、80年代から保守党はこの政策を頑固に維持していた。賃金上昇が実質下がると、年金給付の実質的価値も下がってしまう。二階建て年金給付について、かなり激しい切り込みをして、二階の給付もかり圧縮された。当時のサッチャー首相は二階の給付の廃止も提案した。民営化の提案をしたわけだが、反対され二階部分は残すけれど給付は切りつめる形で牽制を図った。
イギリスの年金保険料は、18.19%まで上昇していたが現在は18%弱まで下がっており、これはこれから年金保険料を上げる必要がないくらいのドラスティックな改革をしたこになる。将来的にはイギリスの保険料は、14%まで落ちてくるという年金専門家の試算ある。サッチャー時代とメージャー時代の改革は、給付をドラステックに切り込んだこであり、現在では年金保険料を上げる必要がなく、ただそのままにしていても保険料は下がってくる状況にあり、現に下がり始めている。
その結果公的年金の重みは減ってきて、年金受給者は公的年金だけでは生活の基礎部を賄えなくなり、現にそのような階層の人々が増えていった。
そこで、その人達の不満を背景にして政権交代が起こった。当然ブレア首相は不満を吸収する施策を行なわなければならない。そこで公表されたものが、グリーンペーパーに書かれたもので、それはステークホルダー年金と第二年金(state's second pension)の導入を行うことを2つの柱にしている。
イギリスの年金制度は、一階が定額の年金で二階が所得に比例する年金である。二階所得に比例する年金は政府管掌の部分があり、日本の厚生年金基金のように企業年金を行なっていれば、政府管掌の二階部分の年金は実施しなくとも良いという制度になっている。