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●50プラスの政治力

「50プラス(50歳以上)」が政策論議に参画してきたことで、高齢者対策がどう変化するかも注目される。現在、50歳以上は全人口の約27%を占めているが、2031年にはこれが41%になる。1960年代のウーマンリブ世代が高齢時代を迎えたこととも関係して、50プラスの世代には、自分たちのもつ政治力、消費力そして労働力を使って、高齢社会のあり方をリードしようとする姿勢が伺える。これまでの「介護」論に「生活の質」論が加わり、高齢者の健康増進や生涯学習、就業促進などとともに、地域の生活環境のあり方を問い直すといった大きな動きにつながる可能性がある。ブレア政権も高齢者の政治力には敏感に対応しており、50プラス論議の盛り上がりようによっては、次回総選挙以降の高齢者対策に大きく影響することも考えられる。

 

●NPOに期待される新しい役割

最後に、NPOがどのような役割を果たすかも興味ある点である。福祉の民営化にしても、公共サービスの現代化にしても、その原点には行政の限界への認識があるし、同時に多くを民間に委ねてしまうことへの警戒感がある。企業的発想や運営方式とともに、市民性や公益性も保障できるシステムが必要とされている。この意味で、その両面を兼ね備える可能性をもつNPOの役割が注目される。そのためにはNPOがある程度プロ化することが必要だが、あまりプロ化し過ぎてしまうと、その市民性や公益性が犠牲にされかねないという難しい面もある。しかし、NPOの多くはプロ化を目ざして進んでおり、今後は市民性を見失わずにサービスを効率的に提供する手腕が問われることになる。また、行政の役割がより一層管理面にシフトしそうな状況の中で、現場で高齢者と接する機会の多いNPOには、高齢者ニーズを掘り起こしたり、社会保障給付の受給を確認したりといった、セーフティネットとしての新しい役割も期待されるようになるだろう。

 

 

 

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