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第7部 今後の動向―注目されるポイント

 

以上が高齢者福祉に関係する各政策分野で進められている現代化政策の内容および長期ケアをめぐっての新しい動きである。最後にこれらを横断的に踏まえながら、今後の動向が注目されるいくつかのポイントを整理しておきたい。

 

●国と地方自治体の役割分担

国営の医療サービスとは違って、対人社会サービスでは地方自治体にかなりの裁量が認められている。課題の一つとなっている高齢者サービスの地域格差も、地域での政治的優先順位が反映された結果ととることも可能である。とくに、地域民主主義の活性化が現在の政治課題の一つであるだけに、地域の意志を尊重する国の姿勢が今後はとくに重要になる。その一方で、英国では国民全体への公平さを理由に、国が全国的な基準や規則を定めるという形で自治体行政に関与することが行われてきた52)。2000年春に予定されている「全国サービスフレームワーク(高齢者ケア)」も、そうした政府関与の一例である。国として地域格差の是正やサービス水準の全国的向上を図ろうとすると、地域民主主義との間に軋轢を生じさせる可能性もでてくる。「利用者本位のサービス」が重視される時代にあって、国と自治体の間にどのような新しい関係が構築されるのかが注目される。

 

●ベストバリューの効果と自治体運営への影響

前保守政権の民営化のシンボルでもあった強制入札制度が廃止され、代ってベストバリュー制度が導入された。「できるだけ安いサービス」を「外部から購入する」という規制が外れたわけで、以前のような公共サービスの復活につながるような印象を与える。しかし、実際にはサービスの外部委託はさらに進むという声が強い。ブレア政権の姿勢を示す表現に「効果が上がれば形は問わない(What counts is what works)」というのがあるが、ベストバリューはまさにこの考え方の実践である。自治体レベルで進められている議会改革でも、地域としての課題の選択と目標の設定、そして成果の評価/チェックができる議会体制への変革が図られている。優れたものは地域内外、公民を問わず採り入れ、公的サービスを継続的に改善する自治体行政がイメージされている。この改革を通して自治体の機能は今後さらに「条件整備型」にシフトするものと予想され、行政に代わってサービス提供を担う民間業者やNPOの能力がこれまで以上に問われることになる。

 

 

 

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