王立委員会では、ここに提案した形で国の責任と個人の責任を明確にすれば、医療サービスを規定する「平等のニーズに応じた平等のケア」の原則が社会サービスの分野で確立できるとしている。さらに、パーソナルケア、ナーシングケアの部分について国庫負担でまかなうシステムを創ることで、民間の保険会社は「個人責任」の部分に限定した新商品の開発がしやすくなり、国民が自己責任を果たす部分が拡大できるという効果も指摘している。
●「全国ケア委員会(National Care Commission)」の設立
王立委員会では報告書の中で25の提言を行っているが、中でも2大提言となっているのが、上でみた新しいコスト分担方式の提言と、ここで説明する「全国ケア委員会」の設立である。この委員会は高齢者の立場を代表する国の機関として設立し、ケアシステムの全体を戦略的に把握し、システムの効果や投資効果について政府に報告することを主な任務とするとしている。より具体的には、つぎのような機能を担うことが提案されている:
※モニタリング機能
・英国での人口動態および高齢化の動き
・既存ケアシステムの新しい状況への対応力
・長期ケア向けの公的財源の適正度
・施設ケアと在宅ケアのバランス
・高齢者向け住宅事情や交通状況の把握
※利用者代表機能
・苦情処理に関係する違ったメカニズムを統合し、長期ケアに関するオンブズマンの役割を果たす
・高齢利用者の声を大臣や政務次官に伝える
・利用者が適切な決定ができるように、正しい情報が容易に得られるようにする
※ベンチマーク機能
・消費者や利用者に対して、権利として期待できるケアサービスのレベルを明確にする。公的サービスが受けられる大まかな基準を示し、全国的な要介護の認定システムを開発する
・全国レベルでのケアの質について独立した立場で判断する
・他の機関と協力し、適正かつ理解が容易な成果指標に照らしてケアの質をモニタリングを行う
※サービス改善推進
・高齢者や介護者へのヘルプラインを整備する
・優良事例の普及や順位表を使って、サービスの質の改善やイノベーションを促進する
・技術的改善やイノベーションについてアドバイスを提供し、また障害者向けに開発された技術を高齢者ケアの分野でも活用する
・医療と福祉の統合を図るために、地方自治体のとNHSの連携を促進する
・ケアスタッフのために専門領域を超えた総合的な研修機会を提供する