ただし、すべてを無料とする必要はなく、長期ケアコストにかかる費用をつぎの3つのコストに分け、そのうちのパーソナルケアコストのみを無料とし、他のコストについては利用者の資力に応じて自治体と個人が分担する形を提案している:
1]生活コスト(食事、掃除、買い物、衣服、光熱費など)
2]住宅コスト(賃貸料、地方税など)
3]パーソナルケアコスト(障害や高齢を原因に必要となるケアコスト)
なお、ここでの「パーソナルケアコスト」にはつぎのような項目が含まれている:
※日常的な身の回りの世話(洗顔、入浴、肌のケア、化粧、身仕度など)
※飲食(調理や飲食物の買物などの行為は含まない)
※排尿や排便(失禁への対応なども含む)
※モービリティ(移動)困難への対応
※処方箋への対応(投薬の管理やモニタリング)
※行動の監督と個人的な安全の確保(認識障害者への対応/ストレスやリスクの低減)
※その他(専門家からの心理面での支援や各種学習、痴ほう者への支援など)
すなわち、要介護のアセスメントで「パーソナルケア」あるいは「ナーシングケア」が必要と判定された場合、その部分のサービスについては誰がどこで提供するかに関わらず、すべて無料にするという考え方である。
現時点でのコスト負担状況をみると、これら3つの区別はないままに、地方自治体は本人の資力に応じて在宅サービスの料金や高齢者ホームの入居料を徴収している。王立委員会の提案は、例えば高齢者ホームに入居した場合、3]の部分は無料として計算対象から外し、残りの1]と2]にかかるコストについて本人の資力を算定し、その結果に応じて本人と自治体が分担するという方式である。在宅ケアの場合も同じように3つのコストを分けて共同負担の部分を決めるべきとしている。こうすることで、病気の種類によって無料になったり有料になったりする不合理な状況(例えばガンのケアは無料で痴ほうのケアは有料)を改めることができると述べている。
つぎの問題は、「パーソナルケア」および「ナーシングケア」のコストを誰が、どういう形で負担するかということである。これについて王立委員会は「リスクプーリング」のシステムが必要だとし、その選択肢としてつぎの3つについて分析を行っている:
1]民間の長期ケア保険への加入に任せ、国は貧困層に対してのみ責任をもつ
2]民間の長期ケア保険への加入を強制し、これができない人に対してのみ国が責任をもつ
3]現在の医療サービスのように国庫負担からまかなう
王立委員会ではそれぞれの方法について外国の事例なども参考に検討を加えているが、結局、国民の民間保険への加入意識が低いことや強制保険とすることに抵抗があること、また民間保険だけでは全国民的なカバーは難しいという理由から、最終的に3]の国庫負担方式を提案している。また、3]の方式の公正さと効率性が国民医療サービスですでに実証済みであることも、現時点では3]の方式がもっとも効果的と結論づける理由の一つになっている。