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◆利用料および利用料の徴収

ケアマネージャーがサービスを購入する場合、病院などの医療機関からのサービスは国の負担となるために無料であり、残りのコストを自治体と利用者で分担することになる。ケアマネージャーは利用者の資力調査を行い、資力に応じて利用料を徴収するのが一般的だが、自治体によっては一律料金にしているところもあれば、利用料を徴収しないところもある。自治体の負担額には一人当たりの上限が設定されており、ケアパッケージの総額がそれ以上になれば、施設入居となるのが通常である(つまり、上限額は施設入居コストに等しく設定されている)。資力調査では年金や所得補助などの他、保有資産の評価額も計算に含められる。

施設入居料はレストホーム£275/週、ナーシングホーム£350/週というのが平均的な額である。国の基準に基づいて自治体が補助額を設定しているため、全国どこも同じような利用料金となっている20)。資力調査の結果、資産総額が£16,000を超えると入居料は全額利用者負担となり、それ以下の場合には資産額に応じて利用者負担分が計算される。利用料の支払いによって個人資産が徐々に減少し、資産が£16,000を切った時点で初めて、自治体からの助成が受けられることになる。

 

5) 社会保障(現金給付)

英国で社会保障という場合、年金や失業保険、所得保障といった各種の現金給付であり、日本よりも狭い意味で使われている。英国では基準レベルの収入がある16歳以上のすべての国民は国民保険(National Insurance)を払うことが義務づけられており、これには公務員や自営業者も含まれる。支払い額は所得レベルによって異なり、この保険料の拠出実績によって必要時に受けられる現金給付の内容と額が違ってくる。すなわち、まず国民保険の拠出条件を満たしているかどうかで2つのグループに分かれ(「拠出制給付」と「無拠出制給付」)、満たしていない場合はさらに資力調査のあるなしで2つに区別される(表22)。社会保障給付の財源は被保険者および雇用主からの国民保険収入および一般財源で、その構成割合は雇用者が約1/4、被保険者が約1/5、残り(約6割)が一般財源である。なお、国民保険収入の一部は国民医療サービスに利用されている。

英国での社会保障費は1997年度に約940億ポンドとなり、GDPの約11%および政府支出の31%を占めている。このうち高齢者への社会保障給付は約43億ポンドで、社会保障費全体の約45.7%を占めて最大の受益者グループとなっている(表23)。社会保障費は1981年度からの16年間で実質約60%増加しているが、全体での構成割合は1981年度の52%から徐々に減少する傾向にある。表21にあげた3つのタイプの給付のうち、とくに高齢者が多く給付を受けているものについていくつか説明する。

 

 

 

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