◆1990年コミュニティケア法による高齢者サービスの改革
1990年コミュニティケア法では、「高齢者ができるだけ在宅あるいは家庭的な環境の中で生活できる」ように支援することが新たな目標として設定された。地方自治体ではまず高齢者のニーズを判定し、高齢者の選択と意志を尊重しながら、個々の高齢者に最も適したケアパッケージを用意しなければならなくなった。また、自治体の内部機能が「サービス購入」と「サービス供給」に分割され、外部に独立セクターを育成してケア市場を開拓することが自治体の義務の一つに加えられた。これを具体化するために、政府から自治体に提供されるコミュニティケア資金のうち、85%は外部からのサービス購入に充てることが強制された。
改革の初期の段階ではこうした政府措置に抵抗する自治体もあったが、現在ではこのコミュニティケアの理念と方法論はかなり普及し、民間セクターとのパートナーシップによるサービス提供への転換が進んでいる。
◆ケアマネージメント
コミュニティケアの最初の段階となるのが介護ニーズの判定で、高齢者本人や家族、一般医、訪問看護婦、NPOなど、さまざまなところからニーズ判定の依頼が寄せられる。各自治体では独自の介護基準をもって介護ニーズを判定し、要介護となればそのケースを担当する「ケアマネージャー」が決められる。多くの場合はソシャルワーカーがケアマネージャーとなるが、医療面でのケアが必要な場合などには、訪問看護婦などがケアマネージャーになることもある。ケアマネージャーは高齢者本人や家族、一般医、地域看護婦、NPOなどと協議し、手持ちの予算に照らしながら、個人にもっとも適した「ケアプラン」を作成する。そして、それに必要なサービスを病院や家庭医、訪問看護婦、自治体の社会サービス、民間業者、NPOなどから購入する。手持ちの予算に限りがあるため、ケアマネージャーはできるだけコスト安のサービスを購入することになり、この段階で例えば自治体と民間業者のホームヘルプの価格が競われることになる。
◆在宅ケアサービス
在宅ケアサービスとしては、ホームヘルプ、デイセンター、食事サービス(配食およびランチクラブ)および施設ホームでのショートステイといったサービスが用意されている。