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表17 高齢者の長期ケア施設ベッド数の推移(イングランド)

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注1) データなし

出所:House of Commons Health Committee(1995).Tinker,A(1997)で引用

 

病院には自治体のソシャルワーカーが常駐しており、退院患者の介護ニーズを判定し、直ちに在宅介護に移れる態勢がとられている。また、自治体とNPOがサービス契約を取り交わし、高齢者が自宅での生活に慣れるまでボランティアが定期訪問するというサービスも増えている(第3部『高齢者対策と市民セクター〔NPO〕』を参照)。

NHSは1948年に制度が確立してから多くの改革を経て現在にいたっているが、とくに1990年NHS法以降は、内部市場の導入などによって経営体制に大きな変化が見られている。一時期には一般医が予算を持ってサービス購入するシステムが実施されていたが、後でも述べるように1999年からこれが廃止され、新たに「プライマリーケア・グループ(Primary Care Group: PCG)」が設立されている。

これによって一般医だけが予算を持つのではなく、一般医、地域看護婦、ソシャルワーカーなどのチームで予算を持ち、必要な医療サービスを購入する仕組みへの転換が図られている。しかし、NHS内部を「サービス購入」と「サービス提供」に分割する原則は維持されており、今後は医療と福祉の連携による統合的ケアが目ざされることになっている16)

 

4) 対人社会サービス

地方自治体は対人社会サービス、住宅政策、公衆衛生、都市計画などを担当するが、中でも高齢者福祉で中心となるのが対人社会サービスである。その財源は国からの交付金と地方税、そして本人が負担する利用料で構成される。全体経費の8割以上は国の補助に依存しており、国が指導する部分(例えば、外部サービスの購入など)もあるが、基本的に地方自治体には地域でのサービス内容を決める裁量が認められており、このことが自治体間にケアレベル格差を生じさせる一因ともなっている。1996年度における英国全体での対人社会サービス経費は93億ポンドで、政府支出の約3%、GDPの約1%に当たる。このうちの約半分(49.4%)が高齢者向けのサービスである17)

 

 

 

 

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