3 要介護高齢者の実態
(1) 施設で生活する要介護高齢者の実態
高齢者が施設に入所する理由の中で、最も多いのは要介護になったことである。施設に入所している高齢者(60万人)のうち、ほぼ2人に1人(28万人)に重度の障害(ベッドやイスから動けない、衣服の着脱に助けが必要)がある(1995年)。
高齢者施設では、入所者に占める要介護者の割合が増加している。高齢者施設の観察によれば、4年前と比較すると、外出する時だけに援助を必要とする入所者の割合は減少しているが、入所者に占める要介護者の割合は3%増加している。これは入所者の年齢が高くなったこと、要介護度が高い人々が施設に入所してくることが理由である。1991年と1995年を比較すると、入所者の平均年齢は82歳から83歳になった。65歳以上の入所者に重度障害がある率は50%であるが、入所1年未満の高齢者の間では55%である。新規入所者の17%はベッドかイスから自分では動けない状態であり、38%は入浴・洗顔や衣服の着脱に助けを必要とする重度要介護者である。
しかし施設に入所している高齢者の要介護度は、施設のタイプによって大きく異なっている。長期医療ケア機関では、93%の入所者には重度の身体障害があり、寝たきりである者の割合が非常に高い。また入所者の80%に精神障害がある。医療部がない集合住宅では、要介護者の割合は最も低く、重度の身体障害がある割合は12%に過ぎない。
(2) 在宅医療ケアを受ける高齢者の実態
在宅医療ケアを受ける人が重度の身体障害を持っている割合(92%)は、長期医療ケア機関(93%)と同じ程度に高い。しかし精神障害がある割合は、長期医療ケア機関(80%)に比べて著しく低く47%である(1996年)。この差がでるのは、精神障害がある高齢者の世話をするのは身内でも困難であるが、身体障害がある高齢者は在宅維持できるためであろう。
在宅医療ケアを受ける期間は、ケースによって大きく異なるが、期間は長くなる傾向にある。ケアの5件に1件は治療期間が3年以上となっている。在宅医療ケアの収容能力は増加しているが、治療期間が長くなっているために、認可ベッドの100%近くが常に利用されている状態にある。在宅医療ケア受け入れ数は限定されているため、承認ベッド数を増加して欲しいとの声が高まっている。
労働・連帯省が行ったアンケート調査結果(1996年)によれば、在宅医療ケアを受けた高齢者100人のうち、30人は一人暮らし、30人は配偶者と生活、19人は自分より若い人と生活、12人は自分と同世代ないし近い世代の人と生活、9人が共同生活をしている。