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2 高齢者が自立を失う要因

 

国立統計経済研究所(INSEE)が行った在宅維持高齢者に関するアンケート調査結果(1996年)では、高齢者が自立を失うか否かは個人差が大きいものの、高齢になるに従って要介護になる者が多くなることが顕著に出ている。そのために要介護者となる比率には、性別の差は認められない。

健康状態も要介護者となる大きな要因となっている。重病ないし慢性病にかかったことがある者(高齢者の56%)の14%が要介護者となっているのに対して、その他の高齢者の場合には要介護者となっている割合は4%に過ぎない。また健康状態が余りよくない高齢者、あるいは過去1年の間に健康上の理由で退職した高齢者の場合にも、要介護者となる確立が高くなっている。治療を受けたことも要介護者になることと関連があり、過去1年の間に入院したことがある高齢者(高齢者の約56%)は要介護者である割合が2倍になっている。

学歴が低い者も要介護者となる確立が高い。要介護者の割合は、初等教育を中途で停止した者は17%であるが、初等教育を終了した者は6%である。これは社会階層によって平均寿命が異なっていることとも一致している。低学齢者は早くから慢性病に侵されるために要介護者となる時期が早く、平均寿命も短くなるのである。さらに就業した経験を持たない者(高齢者の18%)も要介護者となる確立が高くなっている。

所得と要介護の関係に関する統計データはないが、生活レベルは高齢者の自立度と関係しているといえる。「生活は苦しい」あるいは「借金なしには生活できない」世帯の高齢者は(高齢者の9.5%)、「余裕がある」あるいは「問題はない」あるいは「ぎりぎり大丈夫」の生活を送っている者より要介護者となっている割合が2倍も高い。またその他の経済状態を示す指数も要介護者となる確立に関連している。過去2年の間に日常の支出で困難をきたした世帯の高齢者(約4%)あるいは家賃の遅延をした者(1%強)は、要介護者となっている率が高くなっている。

要介護であるか否かは、高齢者が生活する世帯のタイプにも深く関係している。最も要介護者でない割合が高いのは、一人暮らしの者(高齢者の30%が該当し、要介護者の割合は9%)、夫婦だけで暮らしている者(高齢者の43%で、要介護者の割合は7%)である。逆に子どもや親族と生活している高齢者の場合には、15%が要介護者である。しかしこれは、一人暮らしの高齢者が要介護者となった場合には、施設に入所するか、親族と同居するケースが多いからであると見るべきであろう。これは試験段階だった要介護給与の受給者の17%が、過去5年間に引っ越しをしたことがあったという結果にも現れている。これらの人々が引っ越した理由としては、「健康状態のため(34%)」、「子どもの家に近くなる(28%)」が挙げられていた。

 

 

 

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