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新手当の創設は社会保護制度の財政赤字問題で難航したが、上記の実験結果をもとにして、1997年1月24日法により「介護特定給付(prestation specifique dependance)」が創設されることになった。同法は、この給付(PSD)は「自立給付(prestation autonomie)」の創設されるまでの給付であると規定している。実施は1997年4月末のデクレにより締決し、在宅維持および施設入所の該当者に対して県議会が給付金を支給することとなった。

介護給付(PSD)の支給対象は、AGGIR表による6段階のうち1〜3段階に該当する重度障害を持つ60歳以上の要介護者である。AGGIR表による障害度とは、次のようなレベルを指す。

◆第1段階グループ:ベッドやイスから自分では身動きできず、精神機能がほとんど失われており、常にケアが必要な高齢者

◆第2段階グループ:ベッドやイスから自分では身動きできず、精神機能は完全には失われていないが日常生活の殆どの動作で援助が必要な高齢者、あるいは移動動作はできるが精神機能が侵されている高齢者

◆第3段階グループ:精神機能は完璧であるが、移動動作に関する機能に問題があるために、1日のうちに何度も援助が必要な高齢者

介護給付(PSD)は、給付金額と支給対象者の所得(配偶者の所得も加算する)と合計した時に、単身生活者は最高11,724フラン、カップル生活者は最高15,768フランとなるような枠内で計算される。この枠を上回る所得がある要介護高齢者の場合には、要介護費として給付することができる支給額から、単身者は6,066フラン、カップルは10,110フランを差引いた額が支給される(1998年)。

すなわち給付額は、所得(配偶者の所得も加味される)およびAGGIR表の指標に基づく要介護度に応じて定められるが、支給条件などは各県によって異なる。また在宅維持者にも施設入所者にも支給されるが、支給額は在宅か高齢者施設に入所しているかによって異なる。

なお介護給付(PSD)は、あらかじめ分かっている支出に対してなされる現物支給の社会扶助である。給付金は、主に高齢者施設や家事ヘルパー派遣センターなどに直接支払われるが、家事ヘルパー(複数のヘルパーでも良い)への給与を前払いすることが不可能な個人に対しても支給される。家族が要介護高齢者の世話をする場合にも支給されるが、介護をする者が配偶者の場合には受給することはできない。また家事援助サービスに対する給付や第三者補償手当(AC)と同時に受けることはできない。

 

 

 

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