(1) 施策推進のために
現在の福祉システムは、中・低所得高齢者階層の養護費用しか負担しておらず、高齢者全般の介護ニーズとそのサービスに関して妥当な計画は未だない状況である。台湾の高齢者介護に対する考え方はかなりたち遅れており、未だ「救済」時代のイメージにとどまっており、積極的な目標があるとはいえない。近年、政府関連機関は高齢者介護の必要性を認識し始めているが、まだ具体的な検討をするまでには至っていない。
欧米先進諸国の場合、最初は貧困救済から始まってはいるが、1950年代以来時代の変化に伴う改革を経て現在に至っている。まず、人口高齢化に伴って高齢者の介護需要が大量に増加するということを認識し、消極的な救貧政策を放棄し、すべての高齢者に対する普遍的福祉サービスを提供することを目的に公的施設等社会サービスの整備を行っている。しかしその後、高齢者の学習や生活に関する自立意識の向上に伴い、高齢者介護の目標と内容を再び改正している。そして、高齢者介護の目的としては、高齢者の心身機能を増進維持し、在宅での生活を継続できる能力を強化することによって、高齢者が望む住み慣れたコミュニティーでの正常な生活を保持延長させることである。この目標により、今日では在宅サービスが盛んになっている。現在多くの先進国はこの政策目標を採用している。
しかし、近年先進国は、経済的には不況であるため、人口高齢化に伴う介護ニーズの増大に対する負担について、いかに効率を図りコストを下げるかが1990年代以降の介護政策改革の重点となっている。
今日、台湾では政府関係者が人口高齢化のスピードの速さをようやく認識し、高齢者介護の社会的サービスを進めようとしているところである。例えば、内政部は養護用のベッドを特別介護用のベッドヘの変更、衛生署は病院のナーシングホームの建設等を奨励し、公立病院のベッドを長期介護に変更するよう対応策を打ち出している。これらの対策は歓迎されるべきだが、しかし部分的対処であり、高齢者の介護に対する総合的具体的な目標と計画は見えない。早期に目標と計画を示し、その下での適切な社会資本整備と社会的ケアシステムを構築することが必要であろう。<以上提言>
(2) 高齢者介護に関する幾つかの間題
現在、台湾の高齢者介護サービスの供給とこれからの対応策の在り方については、次のの4つの観点があるといわれている。
1] 家族介護に関する過重的な依存
現在のように、高齢者介護の責任は個人とその家族に帰属されていることを考える必要がある。現在家庭は介護の担い手となっているが、今後は女性の社会進出、家族規模の縮小化などによって、家族による介護力は減少していくであろう。