3] 上海市高齢者就労調整連席(関係)会議制度」の確立
1995年3月に、中国共産党上海市委員会と市政府は「上海市高齢者就労調整関係会議制度」を確立することを決定している。この会議は上海市の高齢化対策を促進するため、対策計画の承認やその実施を早めるための議決機関であり、市委員会の副書記が組長、副市長1名と市政治協商会議副主任1名が副組長、市民政局の幹部が書記長、市老齢委員会主任が副書記長にそれぞれ就任している。メンバー構成は、市委員会組織部、市計画委員会、市人事局、市労働局、市社会保険管理局、市衛生局、市財政局、市労幹部局、市組合連合会などの責任者である。この会議は毎年基本的に2回開かれ、高齢化社会や高齢者の問題についての検討しその対策を素早く決済し実施に移している。市政府に所属する事業部門としての市老齢委員会にとってはよい提案を早期に実施することができる。
現在、上海市の区、県も相次いでこのような方式で、区、県の高齢者就労協調関係会議制度を整備している。
4] 上海市の養老保険と医療保険の改革
1993年2月に開かれた上海市第9回人民代表大会常務委員会第41次会議では「上海市市区部社員養老保険改革実施法」が通過し、その精神に基づいて、市政府は「上海市城鎮企業社員養老保険法」も通過させている。その目標は、先述した基本養老保険、企業補充養老保険と個人積立(貯金)養老保険といった3種類の養老保険を一つの制度に取り入れ、個人積立と統合的運用の方法を取り、保障と奨励の機能を持ちながら、次第に全社会をカバーする養老保険制度の確立であった。
(3) おわりに
上海市には政府にすべて依存して生活している高齢者は、前述の「三無老人」しかいない。大多数の高齢者は長年蓄えた貯蓄や子どもの支援または年金によって生活している。市当局は「我が国はまだ発展途上国であり、家庭養老は当分の間続くべき」であると認識し、若い世代に高齢者を尊敬し、親を扶養するよう常に呼びかけている。と当時に大勢の高齢者は家庭で子女に支えられ、老後を過ごすのが望ましいと思い、施設で晩年を過ごすのは余程仕方がない場合以外は、避けたいと思っている。
しかしながら、少子化によって若い世代の人口が親世代のそれよりもかなり減っているので、一部の高齢者は不本意であるが、費用を子どもや養老金(年金)に依存しながらも、老後を施設や社区サービスによって過ごすこととなる。
たしかに、中国には昔から家族による高齢者扶養の伝統と慣習があった。家族が互いに責任をもつ中国の家族では、親は子どもを養育し、子どもは親の老後の面倒を見ることによって、相互に依存しあうようになっている。要するに、若い者が高齢者に頼るばかりではなく、高齢者もまた若い者に頼り、家族や子に頼って老後を過ごしてきたのである。