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3. 上海市の高齢化社会対策

(1) 高齢者対策「五つの老有」

全中国の高齢者対策の基本的方針は、五つの「老有」と称されるスローガンにあり、上海においても同様である。ついては上海の高齢者対策の内容を五つの老有の視点から紹介する。

1] 「老有所養(扶養)」

「老有所養」は、高齢者が物質的精神的の両面で基本的な保障が得られることを指す。ここには経済収入保障、日常生活の保障、精神的な慰めという三つの面が含まれる。1994年6月、上海市市区部では「上海市城鎮職員養老保険方法」を実施し、在職の人々に基礎的な老後保険、勤め先が補充する老後保険、個人積立貯蓄による老後保険を三者平行の形で始めた。そして定年退職者にはインフレによる物価の高騰に対応した物価スライド保証制度を設け、高齢者の基本的生活を保障する保険システムを推進している。その加入者率は1999年98%に達している。

1996年には農村部でも同様の仕組みで「上海市農村社会養老保険弁法」が実施されることとなり、農村養老保険に加入した人数は1999年現在、農村人口の86%を占めている。

また、農村部では「家庭扶養協議書」(老親扶養と扶養後の遺産相続等を含めた契約)を親子あるいは関係者との間で結び、子どもによる老親扶養や社会扶養を具体化している。

特別貧困な高齢者や子どものいない高齢者のために「特別貧困老人救済基金」を設立し、1993年から最低生活保障ライン以下の高齢者、低収入又は無収入の高齢者に救済を行っている。これら二つの制度は、20年以上も継続した旧来の制度を改めたものであり、今後の高齢化の進行に対する具体策でもある。

上海市老齢委員会の統計によると、1998年現在、上海市福利院、敬老院(市、区県レベルは福利院といい、街道、郷鎮レベルは敬老院という)などの養老施設は391か所があり、ベッド数は23,200床である。その内訳は、市レベルは1か所、区県レベルは4か所、そのベッド数4,210床。街道、郷鎮レベルは332か所(ベッド数12,543床)。民間の老人施設は49か所(ベッド数は3,450床)になっている。

また、上海市では組織された「老年包護組」(二人以上のグループで要介護高齢者の日常生活の手助けをすると契めた内容に従って務める)は約10,000余組、「老年互助組」(夫婦で助け合いをする)も約7,000組、高齢者にサービスを提供する志願隊約4万隊があり、高齢者とくに後期高齢者、疾病等によって生活の自立のできない高齢者にいろいろなサービスを提供する人的体制をつくっている。

 

 

 

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