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上海の「退管経済」は、1986年に発足し、2年間の免税、その後の2年間も50%減税の優遇策がある。その数は発足当時の39事業所から1998年末の2,090事業所までに発展している。これらの企業は市場経済の競争の中で生存し発展しており、競争力も強い。また、「退管経済」は第二、第三次産業を補うことを主な経営目的としており、卸し小売、修理加工、技術相談、工事設計などが主な事業内容である。

1998年、上海「退管経済」の事業額は32.2億人民元(約4億ドル)で、年間の利潤は1.38億元、支払った税金と高齢者福祉への提供費はそれぞれ1.15億元と1.14億元となっている。

上海の都市高齢者は、再就労と家事労働のほかに、直接地域コミュニティの公益活動に参加する者は極めて多く、地域コミュニティ(社区)が上海の高齢者の「生きがいづくり」の主要な場所になっている。高齢者たちは社区で、治安・交通管理、衛生・環境の維持、近隣のトラブル仲裁などの公益活動をしている。1990年代に入って、上海の社区は高齢者の社会的ケアの改革に力を入れており、施設あるいは在宅の老人ケア・サービスの体制も次第に整備され、老人の医療保健、救援サービス、家事・食事、体育・娯楽等も社区で解決できるようになってきているが、それは社区の高齢者の努力によるものが少なくない。

現在上海の都市社区で老人サービスに従事している者は約95万人。そのほとんどは上海市の社区ボランティア2,853団体等に属している。それには健康で若い高齢者がリーダー役を兼ねて多数参加している。彼らは、病弱な老人の面倒をみることは、自分の老後のための「積み立て」でもあると考えている。これまでに、上海市では、これらの若い高齢者の人的資源を利用して、約2,000余か所の一人暮らし老人宅を「家庭敬老室」として、家庭訪問や家事援助サービスを行っており、2,500人余りの老人世帯には救援ベルを設置している。その他5,000人余りの在宅老人への配食サービス、約8,500人の病弱・貧困老人には「援護チーム」をつくりその世話をしている。

「上海市老齢委員会」と「上海市老齢科学研究センター」が提案し、いま実施し始めている「老人生活介護互助会」(制度)というものがあるが、これは上述のような高齢者に対する介護や奉仕活動を行っている人々の活動を保証する介護「労務貯蓄」のシステム化を図ろうとしているものである。

上海市の3,248か所の居民(社区)委員会には約2万人の居民委員がいるが、その93%は退職高齢者である。居民委員会の委員長や副委員長を担任する高齢者は3,344人、居民区には平均各1人の高齢者が責任ある役目を務めていることになる。

総括すると、上海市の高齢者の三人に一人は地域の公益活動に参加している。

 

 

 

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