2] 各レベルの地方政府は、高齢者事業などを国民経済や社会発展計画に採り入れる、とともに、高齢の尊厳(敬老)、社会的扶養についての教育活動を行い、高齢者の差別、侮辱、虐待などの行為を禁止させる、等である。
こうした老年法が公布されたことは、改革開放政策によって中国人民の生活水準は向上するとともに、家族も社会も変化している実情の下で、高齢者の社会的家庭的存在も変わってきているからにほかならない。
新中国設立以来、国や地方政府や企業で働いた者に対しては、働いていた事業所が養老(年金)、医療、住宅等を保障し提唱してきたし、恵まれない人々には救済と社会扶養を行ってきた。しかし、上述のように社会は大きく変わり、高齢者人口も急速に増加していることから、老親を扶養したくても扶養できない子の世代の経済、家庭事情、経済発展の遅れからの施設等社会資本の不備、等々、そして何よりも巨大な国土であるが故の地理的、自然環境的条件等の地域的差異から、高齢化率も生活環境にも格差のある中で、一概の対策は採れないのが中国の実情である。よって、対策については、次の上海市における「高齢者」あるいは「高齢化」対策の章で詳しく記述することとする。
2. 上海市の高齢者事情
(1) 高齢者の健康状況
1995年上海市が行った「老年人口総合調査」等によると、上海市の60歳以上高齢者の自己健康評価は、「健康である」と答えた者が29%、「普通」と答えた者は46%、「不健康」と答えた者は16%であり、およそ75%の者は普通の健康状態である。
また、何らかの持病などを抱えている者は86%で、いわゆる一病息災の者が多いことが分かる。
さらに高齢者の日常生活における自立、自立不能(全介護)の状況についてみると、自立している者は89.6%、部分的自立者は7.0%、全介護必要者は3.4%であった。