日本財団 図書館


III 上海市の高齢者対策

 

1. 中国の高齢者問題への対応

(1) 「老齢問題委員会」

増大する老年人口に伴う諸問題に対応するため、1984年中央に「中国老齢問題委員会」が設置された。老齢問題委員会は、増加する高齢者の老後生活の保障、恵まれない高齢者に対する福祉・医療保障などを社会的に推進することを目的に、退官した党、政府の幹部を中心に国務院の労働人事部が所管(現在は民政部所管)する半官半民の組織として誕生した。

1986年には全国の省、直轄市、自治区にも老齢問題委員会(「老齢委」)が設立されている。すでに高齢者問題を抱えていた上海、天津などの直轄市では、中央と同時に委員会を誕生させ、市下の行政単位となる区、県、街道にまで老齢委を設立させている。

 

図3 老齢問題委員会(老齢委)の組織図

017-1.gif

 

また、老齢委の活動運営費は、中央そして省市自治区政府がそれぞれ負担しているが、上海、天津等高齢化先進都市の老齢委活動は活発で、老齢委が設立した老年企業などによる収益もある。

1980年代後半の老齢委は、1]地域社会における高齢者福祉サービスのネットワークづくり、2]高齢者の権益を守る「老年憲章」づくり(各省、市、区が作成)やその宣伝教育、3]退職高齢者への生きがいづくり、等を主要な事業に活動を展開している。

老齢委の事業活動においては、先ず恵まれない高齢者については、所得が無い、扶養する者がいない、身寄りもない、という「三無老人」に対しての地域社会ケア、敬老院(主に農村部の老人ホーム)や福利院(都市部の老人ホーム)への優先入所、あるいは日常生活をサポートする「包護組」づくり(近隣の者がグループで家事援助する。天津市で創設され、上海市などには1万組もある。)などである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION