(2) 都市部で先行する高齢化
中国の高齢化進行は日本など高齢化先進国とは異なり、農村部より都市部において顕在化していることである。これは計画出産が都市部で早く普及したためで、計画出産普及の先進地域ほど高齢化率も高い数字を示している。1990年の人口調査では、全中国の30の省、直轄市、自治区において、65歳以上の人口割合は平均5.57%であった。この水準を上回る地域は12地域あり、ほとんどが沿海地域である。この地域は識字率も高く、計画出産普及率も高い。
高齢化率が最も高いのは上海市で、9.38%(1998年現在は13.3%)、一番低いのは青海省で、3.07%であった。年齢中位値は、全国平均で25.25歳、そのうち、沿岸地域は26〜30歳で、西北地域は22〜24歳である。その中で年齢中位値の最も高いのは、やはり上海市で33.08歳、一番若いのは寧夏自治区で21.86歳である。
(3) 「未冨先老」
人口発展に伴う高齢化は社会進歩、経済発展が要因となると考えられているが、中国にとっての主な要因は一人っ子政策による急速な出生率低下の結果である。先進諸国の出生率低下は経済成長や都市化と同時に進行し、人口高齢化は経済発展に伴って穏やかに進行した。しかし、中国の場合は止むを得ざる人口政策すなわち計画出産と人口移動制約等によって高齢化先進国とは異なる要因があるからである。中国では先進国の高齢化社会を「先富後老」型(豊かになってから高齢化社会が来る)と称している。
1990年、高齢化社会を迎えた世界46か国の先進工業国の1人当り平均のGNP(国民総生産)は1万1,000ドルであり、中国は400ドル余りしかなく、中国が21世紀初頭に高齢化社会国家に仲間入りすると想定する時でも、全中国の1人当りGNPはわずか1,000ドル台という低い水準にしか達しないだろうと予測されている。このような状況から、中国の人口高齢化は「未富先老」型(豊にならないうちに高齢化社会が到来する)と中国では言われている。
(4) 21世紀前半に予測される超高齢化の問題
1950年代及び1960年代の2回のベビーブーム人口、そして一人っ子政策実施後の少子人口コーホート変化が21世紀の高齢化社会に大きな影響をもたらす。特に1962〜1973年の第2次ベビーブーム期に生まれた世代が労働力年齢になっているときは、高齢化率も老年扶養指数も低いが、この世代が高齢期になるときは、高齢化スピードは加速し、老年比率も急速に高くなる。したがって、2020年から老年扶養指数は大幅に上昇し、2030年後は30%以上という高率を続けることになる。こうした人口構造変化は21世紀中国の最大の課題の一つで、その時代に求められる社会システムは現在考えられている社会尺度では推量できないであろう。但し、高齢化先進地である上海が経過し経験するであろう社会変化やその対応対策は中国の各地域の具体的事例となる。そういう意味でも上海市の高齢化社会対策の推進は重要である。