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「子供の教育に地域社会の教育力を生かすべき」だという方針は、中央教育審議会が九八年六月の答申、生涯学習審議会も九九年四月の答申で明確に打ち出した。中でも目的志向型の活動の推進として、これを「第四の領域」と呼び、その代表例としてボランティア活動を挙げている。単なる地域行事の枠を超えた目的を持った活動を行おうという提言である。

では中学校におけるボランティア活動の実状はどうなっているのか?それを整理してみよう。東京都の福祉教育推進委員会のアンケートや、さわやか福祉財団が各都道府県の教育委員会に行った調査をもとに、中学校のボランティア活動の現況をまとめてみた。

まず、活動の主体は「生徒会役員」「ボランティア委員会」「校内部活動・地域のクラブ活動」が主。また、活動の内容は、「地域清掃」や「募金(ユニセフ等)」、「施設訪問・地域老人会との交流」そして「保育実習(保育園や幼稚園での体験)」が大半である。

課題を整理すると、

1]一部の生徒が主体で、すべての生徒が参加していない。

2]課外活動・行事として放課後や休日等に実施されるため、系統的なカリキュラムが組まれていない。

3]活動メニューが少なくどこも同じ内容を実施している。地域の人が参加しづらい。

4]活動は熱心な一部の教員により実施され、その教員が異動すると活動が低迷する。

 

中学校以上の教員は、教科ごとに採用される。従来、教員の力量とは教科の指導力にほかならず、その研究活動の大半も「教科」指導研究である。つまり、「中学校という社会」での絶対的価値は、教科学習(それも高校受験を想定したもの)であり、ほぼそれと同等に生活指導がある(これを補完する存在として部活動がある)。ボランティア活動は、あくまで「課外活動」であり、学習の対象ともされなかったのである。

そんな中で、文部省が今回、「総合的な学習の時間」(二〇〇二年度から小中学校、高校は翌年度から開始)を打ち出した。学校もボランティア活動などの体験学習を重視しなさい、という教育改革である。

 

 

 

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