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一つは地元の学校が荒れると、親の防衛策として「越境」で入学先を変えるという現象。もう一つは、子供自身に問題行動がある場合、背後に家庭崩壊があるのだが、地元中学に入学しづらいので別学区に越境するという現象。この場合は越境先の学校が荒れるという現象も身受けられる。さらに、都心の区の中には少子化のため、行政が積極的に他区からの越境入学をあっせんするという噂まで耳に入る。以前私の所属した学校でも、朝、校門の前を地元の子が隣の学校に通う姿が多く見られた。

いずれにせよ、そこには地域を愛し、地域の学校を育てようという風潮は見られない。最近、公立の学校で選択の自由化も話題になっているが、特色ある学校づくりへの期待が持てる反面、こうした後ろ向きの選択を助長するだけにはなってほしくないと強く願う。

 

教育界でも注目されるボランティア活動

 

小中高校生と地域社会の関係については、一九九八年度「青少年白書」の調査によると、小学校と中高校生で二つに大きく分かれた結果が出る。

地域活動への参加は、小学生で七〇%近くに上るのに、中学生では逆に不参加が八四%、高校生では九三%にもなる。これは部活動や受験も関係しているが、それだけではない。愛知県や岐阜県で興味ある報告がされている。岐阜県教育センターが一九九六年に実施した意識調査によれば、地域行事に対する感想で、小学生は七三%が「楽しく満足している」のに対し、中高生では「あまり楽しくない」が五〇%前後もいる。学年が上がるにつれて子供たちが地域行事に満足できない状況が浮き彫りになっている。この点については両県共に、「地域行事に子供たち自身が企画・運営する分野をつくろう」と提言している。大人は黒子に徹して子供に任せ、自らの存在や役割を自覚する場を設けようという働きかけである。

 

 

 

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