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地域・家庭崩壊に連鎖する学校の崩壊

 

本稿に入る前に、自己紹介をしておくと、私は今年度東京都教育庁からさわやか福祉財団に研修派遣された、現役の中学校教師である。学校教育に関しては、従来から「学校・家庭・地域の連携」と言われ続けてきたが、十分に機能してきたとはいえない。学校も家庭も地域も「崩壊」と表される悲しい時代、互いに自己改革を進めながら連携していくことが何よりも必要だと痛感している。学校について言えば、とかく閉鎖性が指摘されるが、二一世紀を前にようやく各種の改革が進んでいる。そこで本稿では、現場を預かる教師の一人として、これからの地域と学校のかかわり方について、お願いも含めて一緒に考えてみたい。

まずは率直に中学校の現状をお話ししようと思う。

学校を舞台にした暗いニュースが最近増えている。もちろんすべての学校が荒れているわけではないし、子供らしい明るさで中学校生活を送っている子もたくさんいる。しかし一方で「警察白書」や文部省調査でも明らかなように、ここ数年、対教師暴力や器物破損が増加し、多くの学校は生活指導、いわば日常の"治安維持"に追われている状況である。

私の同僚の教師は加害生徒に親身に指導していた中で被害を受け、けがをした。自身の体験としても、この数年に対教師暴力、生徒間暴力、学校間抗争、集団恐喝、不純異性交遊などさまざまな事件とその処理に直面した。

こうした現象はもちろん学校自身にも問題はあるのだが、子を持つ一人の親として考えてみても、家庭の崩壊、地域社会の崩壊が、学校崩壊の一因ともなっている。

越境入学をご存じだろうか?公立学校への入学は通常居住地域で決められる。区域外の学校に入学するために住民票を別の地域に移して仮の住所を定めるのである。越境入学は、以前は有名校に入学するために行われてきた。たとえば東京であれば「番町小、麹町中、日比谷高、そして東大」というふうに。しかし、最近は少し事情が違う。実は意外と問題になっていないが、都心の水面下では、今、新たに二つの現象が起きている。

 

 

 

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