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食事は施設内の食堂で食べてもいいし、外食しても、出前を取っても構わない。食堂でなく自分の部屋で料理もできる。レクリェーションも強制はしない。高齢でも健康で意識がしっかりしていれば外出は自由だ。地元の施設に入ったハリー・クリンガーさんは、入居後も毎日近くのYMCAで水泳をし、週に数回公民館で昔の仲間とブリッジを楽しむ。二〇代から続けてきた趣味をあきらめなくて済んだことに満足している。ブランチさんは仕事を兼ね週二回両親を訪ねて泊まって行く。エバーグリーン・ウッドで守らなければならない規則はただ一つ。夜、警備員が明かりを見て在宅か外出かを確認できるように、夕方ドアの明かりを付け、朝それを消すことだ。

 

アシステッド・リビングには、アトリアのように町の中に建てられ、自立高齢者が入居するものと、エバーグリーン・ウッドのようにナーシングホームに併設されているタイプがある。後者は郊外の広々とした敷地に建てられ、「普通の生活とナーシング・ホームの橋渡し」的な役割を果たしている。前者は、家族がバスや地下鉄で気軽に訪問できるうえ外出も便利なため、健康な高齢者には抵抗しがたい魅力となっている。マンハッタンのアシステッド・リビングは二〇〇〇年には二万軒を超す見込みだが、この事実からもその魅力がうかがえる。

 

ベビーブーマーが五〇代になってから普及する

 

アシステッド・リビングが米国社会で注目されるようになったのは、ここ一〇年ほどである。もちろん、その前にもあることはあった。だが昔の施設は身寄りのない高齢者を教会や慈善団体が救済するというように福祉施設だった。

それがビジネスとして社会に浸透してきたのはベビーブーマー(一九四六〜六四年の間に生まれた世代)が五〇歳になった、一九九五年ごろからである。高齢者人口の大増加を見越して、九七年にはマリオツト、九九年にはハイアットという大ホテルチェーンが参入してきた。

 

 

 

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