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当然、遠方の親を見舞いに出かけるより、近くへ呼び寄せることを好む。ハウスクネヒト夫妻のケースはその好例である。

ジョン・ハウスクネヒトさんは約二〇年前に広告会社を退職した。余生を若いころから関心のあった自然保護に捧げようと、妻のクレアさんを伴ってアリゾナへ移った。砂漠保護団体を設立し活躍したが、彼も八〇歳を過ぎると心身の衰えが著しく、フロリダに住む兄、ニューヨークのブランチさん、そしてワシントンの弟が三か月おきに交代で見舞い、世話をしなくてはならないようになった。子供らに負担をかけまいと思った両親は東部へ戻る決心をし、三人に適当な住まい探しを頼んできた。

 

利用者は三タイプに分け、介護料は介護度によって家賃に上乗せ

 

普通、アシステッド・リビングでは、利用者をその健康状態によって三グループに分ける。食事と掃除と洗濯以外は助けの要らない自立高齢者、介護が必要な高齢者、それに物忘れがひどくなった高齢者で、介護が必要なシニアはその種類・程度によってさらに細かくレベル分けされる。月々の料金は、そのレベルによって上下するが、基本家賃にレベル別の費用を加えた金額が請求される。高額の入会費を取る施設は少ないが、部屋の予約金として四〇〇〜五〇〇ドル(約四万〜五万円)程度請求するところが多い。予約金は、実際に入居した後、最初の支払いに充てられる。ほとんどの施設が美容院や売店を備え、看護婦やソーシャルワーカーが常駐する。希望すればお芝居や買物にも連れて行ってくれるから、まず、至れり尽くせりの待遇といえる。

 

生活を縛らず、自主性を尊重

 

アシステッド・リビングの本当の良さは、高齢者の自主性を最大限に尊重している点だろう。ナーシングホームと違い、介護はしても「縛らない」のだ。

 

 

 

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