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体験先の確保と受け入れ側の課題

 

もう一つ大きな問題は体験先の確保。都内の大学(学生)と施設との間で調整をしているのが東京都社会福祉協議会である。同協議会の福祉人材センター研修室新前幸子室長によれば「東京都では今年度は約六〇〇〇人が施設での体験を行った」そうだ。協力を申し出た施設は約三〇〇あったが、条件が合わなかったところもあり、最終的には二二二の施設に学生を派遣したという。最も多いのが特別養護老人ホームで、在宅支援サービスセンター、知的障害関係の施設が続く。二〇〇〇年度からは四年制大学でも本格的にはじまるので、対象者は一万五〇〇〇人以上にふくらむ。大都市圏では学生数に比べて施設が少ないため、文部省では夏休みなどに出身県で体験するよう勧めている。東京では約三分の一程度が出身地体験である。こうして送られてくる学生たちを養護学校や福祉施設側はどう受け止めているのだろうか?

 

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宮代学園の子供たちと。夕食後の歯みがき指導の様子。

 

「学校での体験は二日間だけなので、どんな体験が適当なのか試行錯誤だ」と言うのは東京都立立川ろう学校の村野一臣教諭。今のところは重複学級の介助と行事の手伝いが中心である。盲学校や養護学校を含めて学校はどこでも少ない日数で大人数を受け入れるので、人的パワーは大きい反面、体験が深まらないという声もある。

一方施設での体験は千差万別のようだが、取材先の二つの施設では積極的に取り組む姿勢が伝わってきた。知的障害児施設「宮代学園」では、今年度初めて福祉実習のない期間に体験生を受け入れた。一度に複数の学生が来ると仲間うちで固まり、子供たちとの深い関係がつかめないので一回につき一人と決めた。毎日の目標を決め、反省や感想を含めて記録を残させている。当然職員の負担も増すのだが、指導員の森本節子さんは「職員の勤務条件は厳しいが五日間で人間が変わるのを目の当たりにでき、今後も社会的な貢献として続けていきたい」と積極的な姿勢を示してくれた。

 

 

 

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