青山学院女子短期大学では「事前アンケートの後、事前指導を二回(講義・ビデオ・感想文)、読書感想文提出、実施計画書の提出を行っている」(清水康幸助教授)としっかりした指導体制を取っている。体験後には実施報告書も提出させ、後輩へのアドバイスも残させるなどフォローアップも十分である。このアンケートや報告書を読むと学生の率直な思いが伝わってくる。
事前アンケートには、介護等体験そのものへの疑問や様子がわからないことへの不安が多く記されている。事前指導後の感想文でも頑強に抵抗する学生もいた。しかし、多くの学生は事前指導を受けて「少し理解できた」「学ぶものがあるはず」と前向きな姿勢に変わっていく。そして体験後には、紹介した通り「障害者や高齢者への認識を新たにする貴重な体験だった」「祖母のこと、両親の老後、高齢社会のことを考える機会になった」など、肯定的にとらえる学生が多い。
しかし、職員との接し方に悩んだり、相手に専門的な技術を持った福祉関係の実習生との違いを理解してもらえずに戸惑ったり、将来福祉関系の仕事をするわけではない学生が行くのは迷惑ではないかと悩んだりと、今後の課題も書かれている。また、自治体によって体験プログラムにばらつきがあるため、初日から寝たきりのお年寄りのおむつ交換をさせられ、福祉現場に否定的なイメージを強く持った学生もいた。
介護等体験はあくまで「体験」であって、福祉系学生の福祉実習のような位置付けはされていない。しかし、当然のことながら体験先の利用者や居住者の活動や暮らしの妨げにならない気遣いが求められる。その上で気付きと学びが得られるよう、体験の意義や心得、配慮すべき事項などを事前に指導していくことが望まれる。