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問題は、この「税方式」にも一理あり、一方の導入間近な介護保険制度の現状にも不備はあるものの、介護保険制度に盛り込まれている理念、「福祉ではなく、権利としての介護」、あるいは「介護の受け手と提供者が、基本的に対等の立場にあることの重要性」といった理念には、これまでわが国の福祉の現場になかった斬新さがあることだ。中熊さんは持論、「介護の質の上限は市場に任せるべきだ」との観点から、こうした政界の動きにも批評の光を当てている。

 

介護は生活支援サービス

 

中熊さんの話の柱は次の五つだった。

1]高齢者は弱者ではない。介護は福祉ではない。介護は生活支援サービスである、2]社会福祉法人の強みと弱みの検討、3]民間企業と社会福祉法人の違い、4]目指すべき方向、5]具体策。

まず1]の現在の高齢者は弱者ではなく、むしろ若い世代よりもリッチなのではないか、との指摘である。「一人当たりの収入では、全世代平均と高齢世代平均とを比べてみると、そこにさほどの差はない。また預貯金からローンなどを差し引いて考えれば、むしろ高齢世代の方が(中略)二倍ほどの金融資産がある。さらに、不動産のストックを比べると、持ち家率では高齢世代のほうがずいぶん高い」「日本では資産ではなく、収入で経済力を比べるため、高齢者の経済力は実際より低く評価されている」(『必ずできる! 介護保険が活きるまち…介護保険が社会を変える』中熊靖著、KBI出版)。

こうした客観的な情勢なのに、高齢者が消費を抑え貯蓄に回すのはなぜか。年金や医療保険が破綻の危機に瀕しているという不安。加えて介護の現状では、中所得者以上は福祉の恩恵に浴することが少なく、介護にどれだけ自己負担しなければならないかがわからない。この不安を軽減する道が介護保険だというのが中熊さんの認識である。

 

 

 

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