重要なのは相手の気持ちを察してあげることなのだから。お互いに意見を言い合う「対話」に対し、ひとつの会話を共同作業でつくり出すという姿勢を明海大学の水谷信子教授は「共話」という新しい言葉で表現しているが、なるほど姑と私の間にこの共話の姿勢があれば、冒頭の行き違いも避けられたかもしれない。
会話は聞き手も共につくるものだということを確かめるため、ヒンシュクを買うこと覚悟で、杉戸さんに教えていただいたある実験をやってみた。電話で相手が用件を話している間、ウンともスンとも言わず黙っていたらどれくらいで相手が不安を感じるか…。当財団広報・企画グループのE子さんを標的に試した結果、八秒しゃべったところでE子さんは話を止め、さらに二秒の空白の時間をおいて不安そうな声で「聞いてますか?」
おしゃべりをする時、無意識のうちに相づちを打ったり、うなずいたり、「なるほど」「それで?」などという言葉を挟んだりするが、これが円滑なコミュニケーションには欠かせないものなのだ。さらに杉戸さんによれば、聞き方を工夫することによって、相手の考え方を聞き手側に引き寄せることも可能だとか。まずは聞き上手をめざすことからコミュニケーション術を高めよう。
男性に奮起!“言葉の使い方に気を使っているのは?”
とはいえ、行き違いの原因がすべて聞き手の落ち度と言ってしまうのは飛躍。文化庁文化部国語課が九五年から毎年行っている「国語に関する世論調査」九七年度版によると、「普段、言葉の使い方に気を使っている人」の割合は、二〇歳代を除く各世代で男性が女性を下回っており、さらに年齢別に見ると一〇歳代に次いで六〇歳以上の高齢者が低くなっているのが目に付く(次頁表参照)。これについて国語課の浅松絢子主任国語調査官は、「高齢者は社会との接触が少なくなってコミュニケーション自体が少なくなっていること、高齢になると相手が気を使ってくれる立場になることがあるのではないでしょうか。