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このように介護保険制度における、一号保険料を決める「仕組み」こそが、ある意味ではこの制度設計の神髄のひとつなのである。ところが、まずマスメディアがこの保険料決定の精緻な仕組みをまったく説明してくれない(その重要性が理解できないのだろうか?)。また市町村もほとんどがこの「仕組み」――お年寄りのみなさんが出してくださった保険料の総額の六倍の財源になります――という説明をしない(高齢者の負担一七%に対して市町村負担は一二・五%でしかないということを言いたくないためなのか?)

 

介護保険の本質

多数市民が"弱者にならずにすむようにする"こと

 

結果的に保険料の金額がいくらかということばかりが取り沙汰されるという、いささか虚しい論議のレベルになってしまっている。「負担はなるべく少ない方がよい」という牢固たる「弱者救済の福祉」の固定観念を抜け切れないでいる。介護保険とは、実は多数市民が「弱者にならずにすむようにする」新しい制度なのに。特にマスメディアの「奮起」を促したい(もっときちんと勉強してよと)。

厚生省の集計では結局全国的には一号保険料は三〇〇〇円程度に落ち着くようだ。そしてこの保険料の徴収に関して、政権与党の中には選挙を控えて「とにかく負担増を求めるのはコワイ」という、理屈抜きのおびえから与党の領袖の「保険料の半額を税金で補助する」などという思い付き発言が出て、これをまたマスメディアが大きく報道するという、政治不信を増幅する風景さえある(では三年後、要介護の高齢者が増えるから保険料の大幅な増額は必至だが、その時にはいったいどう対応するのだろう)。

しかし何度も行われた世論調査では、過半数の市民が三〇〇〇円はおろか五〇〇〇円でもよい、老後の安心が得られれば保険料は増額してかまわない、と回答しているのである。

 

 

 

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