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実は高齢者の人口比が、一万五〇〇〇人対四〇〇〇人つまり、三・八対一だからである。

反復するが財源はその市町村の一号保険料の六倍になる。だから保険料が同じであれば、高齢者人口が多いほど中央から下りてくる二号保険料と租税の補助金(交付税と呼ぶべきか)がそれに比例して増える。あるいは高齢者人口数が同じであれば、保険料が高いほどそれに比例して二号保険料も租税負担分も増えることになる。やる気のある市町村ほど手厚い補助金が付くと理解してもよい。つまり当該自治体の高齢者福祉にかける熱意のほどによっても増減する。この事実はこれからの地方自治体の政治構造、つまり選挙にもメガトン級の影響を与えかねない時限爆弾といえよう。

 

在宅介護と保険料

二四時間ケアを充実すれは保険料は安くなる

 

ただし保険料アップについては、高い報酬が付く療養型病床群などの施設が過剰である場合にも、保険料が上昇することも付け加えておかねばならない。要するにこれまで在宅ケアサービスをはじめ、高齢者福祉を怠り、介護負担に困窮する世帯のニーズを「社会的入院」というかたちで、つまリ本来福祉で受け止めるべきニーズを医療に(より正確には市町村があまりかかわらなくてよかった医療保険財源に)付け回してきたところも、すでに必要な財源が膨張してしまっていて、保険料を高くせざるを得ないという要因もある。

ちなみに筆者が策定委員をしている大阪府下の人口四〇万人のH市は、数年前から二四時間対応のホームヘルパー派遣を行ってきた結果、施設入所待機者はきわめて少なく、かつ保険料が試算過程では二六〇〇円から上がらず、全国平均に近づけるために「横出しサービス」など組み込んで、保険料を上げるのに「苦心した」という経緯がある。

要するにこの制度導入以降は、すべての地方自治体は「金がないので高齢者福祉を整備充実することができない」という言い訳が成り立たなくなるというきわめて斬新かつ徹底した地方分権の財源方式になっているのである。

 

 

 

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