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介護保険料は、単に金額の大きさだけを云々するのではなく、その中身をきちんと理解することが何よりも望まれる。まず政治家がそしてマスメディアも、二一世紀を目前にして頭を切り替えてもっと市民を信頼した、新しい市民福祉社会に向けて大胆な歩みを進めてほしい。

 

保険料と介護認定審査会

ルーズな認定は保険料の値上げに

 

最後に要介護認定を市町村が行う「行政処分」と「市民参加」の意味について指摘しておこう。サービス提供の要の一つであるニーズ評価の前半である要介護認定は行政処分とされている。つまり市町村の責任である(ニーズ評価の後半は「ケアプラン作成」)。要介護認定とは、介護保険制度で利用者が使える費用の上限、つまり、この制度における利用者の権利を確認する行為である。

この重要な確認作業に当たるのが「介護認定審査会」であるが、この委員には原則として「行政職を入れてはならない」とされている。実は介護認定審査会の本質は「市民委員会」なのである。最も重要な市民の権利性の確定作業が市民委員会の裁定に委ねられ、しかもその確認については市町村長がそのまま追認して責任を負わねばならない。もしこの委員会がルーズな介護認定を行えば、それは財源の膨張につながり、最終的には保険料の増額(もちろん租税負担分も増える)ということになる。

市町村は三年ごとの保険料改定のたびに、増額の必要性を住民にきちんと説明しなければならない。その際、保険料の値上げの根拠は市民委員会たる介護認定審査会の責任にもなるのだ。

このように介護保険制度では保険料決定と要介護認定の仕組みによって、市民自治と行政責任を巧みに絡ませた、かつてない斬新な地方自治・市民自治の方法論でもある。こう見ていけば、公的介護保険における「公的」責任の意義がより明確になろう。

 

 

 

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