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四町共同で取り組む介護保険

 

このまま高齢化が進めば、今は元気なお年寄りも一人では暮らせなくなる。後継者のいないミカン畑は働き手を失って荒れていくだろう。現に今でも摘果されないまま放置されたミカン畑が山肌に点在する。

若い者は島を出て帰らず、島の生活を支えてきた高齢者は老いていく。これは東和町に限らず大島郡の四町すべてに共通する姿であり、山口県の中でも際立って象徴的な「過疎と高齢化が進む地域」が周防大島である。

こうした現実を前に、山口県は腰を上げた。周防大島を若者から高齢者までが共に安心して暮らせる島にしようという島づくり構想に着手したのである。

「周防大島高齢者モデル居住圏構想」と呼ぶこの取り組みは、県の主導で四町の行政機関と福祉・医療にかかわる民間団体を巻き込み、国の関係省庁からのバックアップを得て、九七年にスタート。同年六月には国、山口県、郡内の合わせて四三団体で構成する周防大島高齢者モデル居住圏構想推進協議会を設立し、若者定住、産業振興とも連動させた島を挙げての高齢化対策に乗り出した。

「この構想には四つの柱があり、それを二〇一〇年までに一つ一つ実現させていこうという息の長い取り組みなんです」と、同推進協議会事務局長の松村由明さん。構想のポイントは、1]高齢社会においてすべての人が生き生きと暮らせる地域づくりをめざす、2]保険・医療・福祉分野にとどまらない幅広い分野にわたる、3]四町の交流と連携による広域的な取り組みである、4]多様な住民参加を基本とする――の四つである。

 

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老人給食の調理に朝の5時から働く81歳の亥川鶴枝さん。

 

 

 

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