ヘタでも一生懸命プレーする姿には、胸を打たれる
山名さんは、自分の担当した試合のビデオを撮って、試合後に一つ一つのプレーを検証したり、「審判日誌」をつけてその日の試合の反省点を書き出すなどして、日々、技術の向上に務めている。また、体力維持のために、週二回は泳いだり、エアロビクスをして体を動かしたり、打球の行方を見極められるようにと、駅のホームでは通過する電車の乗客を目で追いかけるといった訓練も怠らない。
「明日審判をするという日は、できるだけ早く寝るようにもしています。体調がよくないと集中力に欠けますから。プロの審判と違って本業を持っているので、できることには限りがありますが、子供たちにとっては晴れの舞台ですから、判定は自分のベストの状態でやらなあかんと思っています」。言うならば、まさにボランティアのプロ根性だ。
このように山名さんの場合、グラウンドに立つのは年間四〇試合でも、その何倍も、何十倍も、審判をするためにプライベートの時間を割き、不断の努力を重ねてきている。収入が伴うならいざしらず、まったくのボランティアなのに、である。いったい何が山名さんをそこまで夢中にさせるのだろう。
「ヘタでも一生懸命プレーする、子供たちのひたむきな姿でしょうか。地方大会なんかだと、それこそ"大人と子供"くらいの力の差のある対戦もあるんですが、どんなに点差がついても、必死に向かっていくその姿には胸を打たれますね。大学時代の野球部の監督からは、"学生野球とは、与えられた条件で最大の努力をすること"と教えられましたが、確かに、学校によってはグラウンドがろくに使えず十分な練習ができないとか、部員が少ないといったケースもあるでしょうし、家の手伝いをしなければならないので練習時間が限られてしまう子もいるかもしれない。でも、そうした条件の中で、いかにその選手が努力をしたか、その過程が一番大切だと思うんですよ」