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「いずれは自分たちもこのシステムのお世話になるわけだから、ボランティアできるうちにやっておこうと思って」という大島さんの思いは、本部に詰める全員に共通するものだ。だからこそ、もっと多くの人が福祉ネットワークの会員になって、ボランティアにも加わってほしいと願っている。

 

老いてもわが町、わが家で

 

こうした活動が評価されて、『福祉ネットワーク池袋本町』はこの一月、「一九九八年シチズンオブザイヤー」を受賞した。この賞はシチズン時計が社会に感動を与えた無名の市民を顕彰するもので、今回の受賞は、町内会という身近な組織を活性化し、電気ポットや炊飯ジャーという生活用具を活用した試みが高く評価されたものだ。

対外的にも広く活動が認められるようになった中、福祉ネットワークに向ける行政の風向きも多少変わってきたという。というのも、福祉ネットワークのはじまりが親子餓死事件をきっかけにしたものだっただけに、地元豊島区はネットワークの活動を当初あまり快く思ってはいなかったらしい。「貧しい福祉行政への告発と受け取り、どうせ自然消滅するだろうとの見方から何の支援もしてくれなかった」と網野さん。それが受賞をきっかけに、地元の地方紙「豊島新聞」に紹介記事が掲載されるなどして区民の関心が高まったことから、行政の対応にも変化が見えてきた。

この点について、豊島区の保健福祉センターでは「都会地で高齢者の安否確認をこういうシステムで実践している試みには敬服している。ただ区内にはこうした公益性の高い活動をしている団体はいくつもあり、行政としては個別に助成するのではなく、それぞれのネットワークが連携して大きな福祉の輪になるようなかたちで支援していきたい」と話している。

 

 

 

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