また、反響は、電気ポットと炊飯ジャーを改造した象印マホービンにも数多く届いている。福祉団体や地域からばかりでなく、老親と離れて住む団塊世代から「親の家のポットと自分のパソコンをつないで安否確認できないだろうか」との問い合わせもある。ソフトを改良すれば、将来的にはそうした個人のニーズにも応えることはできるはずで、象印マホービンでは現在ソフト面も含めた安否確認システムの技術開発を進めている。
もちろん『福祉ネットワーク池袋本町』でも、次の構想をしっかりと見据えている。ポットやジャーを使った安否確認からさらに進んで、コンピュータ・ネットワークを駆使した在宅医療を支援していくというものだ。これは自宅で療養中の患者の心電図と呼吸曲線を自動的に送信させようというもので、すでに心電図のシステムは網野さんによって完成した。これにより、患者の状況を医院でリアルタイムに把握することができる。地域に暮らすお年寄りが、安心して在宅医療を受け入れることができる環境が整ってくる。
そして、めざす最終目的は、やはり地域の中での人と人とのつながり。住み慣れたわが町、わが家で安心して老いることができる地域社会をつくること――。三年目を迎えた福祉ネットワークの活動は、「老いてもわが町で」を合言葉に、着実に地域に根を下ろしているように見える。
心を置き去りにして物質的な豊かさを追い求め続けた二〇世紀。間近に迎える次世紀での課題は、「心身共に豊かな暮らし」。その実現は、こんな身近なところにもヒントがあるのかもしれない。