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これからは少なくとも六〇歳までは自分の努力で身体の健康を維持することを全国民が最優先で考えるべきです。中年から高年になるまでにかさむ医療費を全部高年のほうに集中させれば、より手厚い医療や介護に用いられるようになります。つまり若い人はめいめいが健康に投資をするという考え方。そうじゃないと必ず破産します。そもそも今の日本の三分診療では患者を本当には診ていないでしょう。病気のうちの六五%は二〇分間お話を聞いてあげるだけで解決するんですよ。

堀田 そうなんですか?

日野原 こうしなさいという方向が示されますからね。日本では開業や病院外来で、一人のお医者さんが、多いときには一日に一五〇人も診てるところが稀にあるのですよ。一分でも三〇分でも診察料金は同じでしょ。だからちょっと診てまた明後日いらっしゃいとなる。それと、MRI、心電図、心臓カテーテルなどの検査をやたらにして収入を上げたりとか。でも二〇分聞いて三分の二が解決できるんなら、その診察料を高くすればいいじゃないですか。結果的にはそのほうが医療費はかからないし、患者さんのためにもいい。クリントン大統領が人を送って日本の健康保険の医療制度を調べて、あきれて帰ってきたという報告を出してるんですよ。

堀田 患者との会話がまるでないと。

日野原 そうです。一〇年以上前ですけどね、WHOコンサルタントで英国の医療制度改革で指導者として取り組んだジョン・フライが日本の医療現場を見たときも厚生省に叱声して帰ったんです。「日本の長寿はちっとも誇りにはならない、生きることへの喜びや意欲を失って、早く死にたいと思うような老人が寝たきりにされて、ただ栄養を与えられて寿命が長くなってるだけ。とても文化国の長寿とはいえない」と。まさにそうでしょう。このままでは日本は世界から侮辱されてしまいますよ。

 

 

 

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