西神仮設住宅。手前は車イス用のスロープ。入居者も減り、掲示板のお知らせもやがてなくなる日が来る。
「自治会がまだできまへん。必要だとは誰もが思っているのやけど、なかなか役員になり手がおまへんのや。何回も話し合いしているのやけど」
田中(仮名)さんは五七歳。以前は靴屋さんだった。
「もう長田に戻る気になれまへんな。ここのええ空気に慣れると、あのごみごみした空気を吸いに戻ろうとは思わんね。必要なんはわかっているのやから、そのうちに自治会もできまっしゃろ」
室内はバリアフリー仕様で緊急ベルもトイレや風呂場に設置されている。ベランダは奥行きも幅も広い。「3LDKの一室は私の書斎ですわ」。満足そうにベランダの材木を披露してくれた。「これで飾り物でも作ってみようかなと思うて。建設現場で働くのはえらいけど、賃貸いうても自分の家みたいなものやし、これから落ち着いてがんばって働きまっさ」
高齢者のための復興住宅、シルバーハイツに住む
次に訪れた神戸の北区、シルバーハイツひよどり台は、六〇歳以上という年齢制限がある。自立した生活のできる人に限られるが、生活支援員が常駐している。ライフサポートアドバイザーという。集会所はだんらん室と自治会が名付けた。入居者たちで自治会を結成し、だんらん室を毎週土曜日にはふれあい喫茶の場として、一回は食事会を開く。訪ねた日は喫茶の日で、コーヒーにトーストと卵が付いて百円也り。美空ひばりのビデオが流されていた。