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時間もできたし「今は新しく住んだこの町のマップ作りに精出しているんです」と手製の地図を示してくれた。それぞれの並木の特徴を詳しく教えてくれる。どこにどんな店があるのか、ひと筋ずつ歩いては、地図に書き止める。永住すると決めた意思を感じる。元の街に戻りたいという嘆き節はひと言も出なかった。

未来都市といわれたこの町も二〇年が経過した。骨組みだけのタウンではなく、人のぬくもりが育ってきたのだろうか。ここで生まれた子供も二〇歳になっているわけだ。

 

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(上)HAT神戸の高層集合住宅群。

(下)ポートアイランドの中央並木。緑に囲まれた環境が憩いを与えてくれる。

 

ま新しい西の郊外型住宅での憩い

 

三宮から地下鉄で二五分。復興住宅の建つ西神南に足を運んでみた。

オレンジとグリーンの壁が明るい。素晴らしい空間に恵まれた町。住宅の前には広々とした公園が多くの人を招き寄せている。ここには旧住宅の人たちもやって来る。建物の間は植え込みが幅広くとってあり、花々も四季絶やさぬように設計してあるらしい。八軒ずつの階は誰がどこに居るのかわからぬほどの大規模なものではなく、それが暮らしやすさをもたらしているようにも思えた。

棟の間の空間も十分にある。庭と庭の間を歩いていると、シーズー犬を散歩させている人に出会った。ペットを飼っていいのかと一瞬疑問がかすめたが、それを言う気にもなれないほど、のどかな風景だ。

 

 

 

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