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堀田 いかに前向きに心を保てるかどうかで、脳も身体も敏感に、素直に反応しているということがよくわかりました。要するに、結局は自分なんですね。いかに明るく、プラスの方向に自分の心を持っていけるか。

伊丹 おっしゃるとおりです。困難に負けないぞという姿勢、そして何か生きがいを持っていることです。心に張りが出ますから。

 

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堀田 それが、先生が長年ご研究されている生きがい療法ですね。

伊丹 ええ。宗教的なものでもむずかしいものでも決してなくて、要は困難や不安、死への恐怖への上手な対処法を学んで、人が本来持っている治癒力を引き出そうというものです。

堀田 生きがい療法の活動でモンブラン登頂にがん闘病中の方がチャレンジしたことを本で拝見しましたが、みなさん本当に前向きで。

伊丹 一九八七年ですね。当時の医学界の常識からははずれていましたが、その後、各国のがん患者さんが同じように世界の有名な山々に挑戦しているのを見ても、少なからず影響を与えることができたのではと思っています。

堀田 自らの力で生きがいをつくり出し、それによって病気という困難とも闘っていく。生きがいという意味では自分でボランティアをやるのもいいと思うのですが、どうでしょうか?

伊丹 ええ、私どもの生きがい療法の関係者はボランティア的なことも日ごろから取り組んでいるんですよ。たとえば、がん闘病中の方やそのご家族、それとボランティアが国立がんセンターに出かけて行って、ロビーの白い壁にいろんな楽しい絵を描かせていただく。入院患者さんも一緒に塗っていただく。自分も楽しいですし、入院している人もそれがボランティアになるわけです。あと、がんの方のボランティアでは、看護学校や国立大学の一般教養の講義でご自分の体験談を話されたり。

堀田 ああ、それはいいですねえ。

 

 

 

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