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その改革の大きな柱は、1] 施設介護から地域・在宅介護へ、2] 福祉の財政・権限を中央政府から地方自治体へ、3] 税負担を企業から個人へ、である。この改革は驚くほど急進的に実施された。

施設介護から在宅介護(在宅自立支援)への意志は明白であり、在宅高齢者を支える各種の基盤整備(サービス付き住宅整備、家事支援、食事宅配、地域看護、移動サービス、住宅改造、緊急通報システム整備等)を充実させる一方で、施設型の介護サービスを大幅に削減した。

「施設」から「在宅」へという流れは、日本でも同様である。しかし、フィンランドの要介護高齢者の生活を実際に見て感じたことは、両国における「在宅介護」の意味の違いである。日本における「在宅介護」とは、家族による高齢者の介護を支援するという意味合いが濃いが、フィンランドでは高齢者本人が可能な限り自宅で独立して生活することを支援するという考え方が基本である。フィンランドで訪れたサービス付き住宅やグループホームで出会った高齢者は、片足を失って車イス生活の八〇代の女性も痴呆症の九〇代の男性も「自立した」生活を営んでいた。それを裏で支えているのは医療・福祉分野のプロ達の仕事と、生活の場面に溶け込んで使い込まれている福祉用具なのである。

フィンランドでは驚くような福祉用具を見かけたわけではない。しかし、その人自身ができるだけ自立して日常生活が営めるように必要なものはきちんと備えられていた。また福祉用具といっても電動ベッドや車イスといったものだけではない。車イス利用者にも使いやすく高さを電動で調整できるキッチンや変形した足にフィットする歩きやすい靴など、「福祉化」した生活用品そのものが高齢者の自立生活を支えている。これらは「介護者」のためのものではなく高齢者の日常生活のための「道具」なのだ。

 

●日本の介護保険と福祉用具

福祉用具のレンタルと購入費は介護保険法が施行されると、介護保険の給付対象になる。

 

 

 

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