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定年を一年後に控えて会社を退職し、『流山ユー・アイ ネット』という高齢者や障害者の生活支援等を目的とするボランティア団体に参加した。二年前のことだ。「私のいたNTTでは、五五歳が関連会社に行くかどうかの分かれ目でした。そこで私の希望で退職させてもらいました」

千葉さんは、すでにNTT関係の仕事に魅力を感じなくなっていた。幸い子供も成長して手を離れた。これからは自分が本当に生きがいを感じられることに第二の人生をかけたい。奥さんの許しを得て、それを実行に移した。記事で読んだ『流山ユー・アイネット』に連絡を取ったのだ。ボランティアの仲間たちは温かく迎えてくれた。約一年間、介護の仕事にかかわりながらホームヘルパー三級の資格もここで取った。病院の送迎をやっているのでマイクロバスの免許も取った。

「土日しか地元にいない毎日、勤めていてはとてもここまでできない」というほど精力的に動き回る日々。地域を基盤としたライフスタイルを視野に入れながら第二の人生でのネットワークづくりに励んでいる。

もう一人、津端修一さん(七四歳)は、アントニン・レーモンドという著名な建築家のもとで学び、のち公団の創設に参画して数々のニュータウンの街づくりにかかわってきた経歴を持つ。その後、広島大学で教え、現在の名刺には「自由時間評論家」と記している。

二〇年前に市民生活を観察するためにドイツを訪れ、そこで初めて「クラインガルデン(小さな庭)」に出会う。「クラインガルデン」は、市民が畑を持ち余暇を利用して野菜を育て、家庭で食べる野菜はなるべく自分で作ろうという市民運動だ。この運動の推進に津端さんは今全国を歩いている。

「ぼくは、人生は終わりなき日常だと思いますよ。サラリーマンには定年がありますが、ぼく自身はそのときの興味の赴くままに生き、整理と拡散を重ねてきたので、その時々のネットワークは常に付いてきている」

過去にこだわらず、自らさまざまな仕事を任意退職してきた。

 

 

 

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