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介護保険対象外となった「福祉難民」をどうするか?

 

病院の社会的入院は以前から大きな問題と認識されていましたが、介護施設である特別養護老人ホームにも介護を必要としない社会的入所者がたくさんおられます。これらの施設入所者は、よくいわれる「介護難民」ではなく、不充分な高齢者福祉施策が生んだ「福祉難民」なのです。また、ホームヘルパーのサービスを現在受けている約四一万人の利用者も約一〇%が介護保険の対象外の自立であると判定され、来年四月からはホームヘルパーを介護保険では利用できなくなる高齢者が約四万人発生すると予想されます。デイサービスやショートステイサービスでも同じような問題が数万人に起きると予想されます。在宅福祉サービスの利用者も介護以外のさまざまなニーズで在宅福祉サービスを利用しているのが実態です。

老人福祉制度で福祉サービスを受けるためには、福祉事務所や市町村の窓口に申請し、ソーシャルワーカーの面接や調査を受けたうえで福祉サービスの対象になるか、どのようなサービスが必要かについて決定が下されます。つまり、よくも悪くも主観的、総合的な判断により福祉サービスは判断されるのです。それに対し介護保険では、"保険事故"としての介護サービスが必要であることを要介護認定審査により認められなければなりません。

"保険事故"は保険加入者全員にとって普遍性・公平性の高い、一律の基準によって成立します。したがって対象者の社会的状況や家族状況、地域の状況などは一切考慮されません。九〇歳の独居老人の男性が炊事などの家事能力がなくて困っていても介護保険の理念では、それは私的な問題です。なぜなら、家事をキチンとしている高年齢の男性もたくさんおられるからです。東北地方などの豪雪地帯で冬期は買物や病院に行けない高齢者も"保険事故"の対象にはなりません。なぜなら、介護保険は全国一律の基準で判定されるからです。あるいは、日本特有の段差の多い家屋構造では車イスも使えず自宅で判定を受けたときには「要介護」でも、施設に入った途端、バリアフリーの配慮が施された施設の中で再判定を受けると、「自立」、「要支援」だとされ、施設を利用する権利が喪失します。

 

 

 

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