介護保険の対象にならない自立した高齢者であっても、家事援助や生きがい支援など日常的な生活上のサポートが必要な方も多く、ましてや在宅の要支援・要介護の高齢者を支えるためには図1の介護保険のサービスだけでは充分とはいえません。
介護保険の実施により引き起こされる最大の老人福祉問題は、現行の老人福祉法による介護サービスの対象者や医療サービスの対象者がそれぞれサービスの対象外として排除されることです。昨年行われた要介護判定のモデル事業では、表1のとおり介護保険の指定介護施設に移行される特別養護老人ホーム・老人保健施設・長期療養型病床群の現入所者のうち約一〇%が介護保険の施設入所対象外である「自立」、「要支援」と判定されました。
「自立」、「要支援」の施設入所者のうち、特別養護老人ホーム入所者は五年間に限り、猶予期間が認められていますが、老人保健施設・長期療養型病床群等の病院には猶予期間が認められていません。そのため、約三万人が来年四月に向け、強制退所されようとしています。猶予期間が認められた特別養護老人ホームの「要支援」、「自立」と判定される約一万五〇〇〇人もの人々の介護報酬が低く設定されれば、その方々の事実上の追い出しが行われる恐れすらあります。これらの施設に入居している高齢者が全員、在宅に戻れる訳もなく、受け皿となる施設の養護老人ホームにも軽費老人ホームにも空きはほとんどない状況です。