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全労済が介護サービスに取り組んでいることがあまり知られていないこともあって利用者はまだ少ないが、「あちこちの県でサービスがはじまり、全労済の介護サービスには心のふれあいがあって質が高い、と評判になれば、利用者は増えるはず」。筒井さんは自信のほどをのぞかせる。

 

ホームヘルプサービスを中心に自治体の業者指定をめざす

 

全労済は勤労者による共済事業を行う団体として一九五七年に設立された。「こくみん共済」や「せいめい共済」「ねんきん共済」など一二種類の保険を持ち、組合員は全国で一三四〇万人。出資金を支払って各都道府県労済の組合員になれば、少ない掛け金でいろいろな保障が得られるため、組合員の七割が家庭の生活者だ。勤労者の共済運動からはじまった全労済の事業は、今では一般市民への生活サービスにウエートが移っている。

介護サービスの事業化は、高齢社会に生きる組合員のニーズに応えようと取り組みはじめた。将来的には一三番目の保険事業として「介護共済」を加える構想もある。

全労済が介護サービスに参入する意義について、筒井さんは「介護サービスは人と人が助け合う協同組合の理念に重なります。営利を目的としない全労済がこれの事業化に積極的に参画する意義は大きい」と話す。協同組合が介護サービスの事業主体となってホームヘルプサービスを提供する事業は、すでに生協やJAなどではじまっているが、全国の家庭と職域に幅広い組合員を持ち、総資産一兆三五四七億円(九七年度)という巨大な財政基盤を有する全労済が介護サービスに取り組むことは、「介護の社会化」をめざす諸団体や地域に大きな影響を及ぼすだろう。「生協やJAとはあくまで協力関係でやっていく」(筒井さん)方針だ。

全労済は当面の事業の中心をホームヘルプサービスに置き、指定事業者として市区町村からの仕事を受託することをめざしている。サービスを事業化できる県から先行実施することからパイロット事業とも呼んでいる。その第一号が冒頭で紹介した札幌市、次いで横浜市である。

 

 

 

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