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つまり、居ながらにして、いつでも、どんな離れた所ともコミュニケーションを取ることができるのだ。行動範囲が狭くなるお年寄りにとって、これほど便利なものはないだろう。

 

六〇歳以上を対象に初心者講習会

 

大川さんが『コンピューターおばあちゃんの会』をはじめたのは九七年の春。高齢者にとって便利この上ない道具であるのに、いざパソコンの使い方を習おうとすると、これが決して簡単ではない、というのはみなさん容易に想像できるだろう。あちこちでパソコン教室は開かれているものの、どこの教室をのぞいてもお年寄りは聞きたいことも聞けず、わからないまま取り残されている。

そこで大川さんは一念発起。お年寄りだけを対象にしたパソコン講習会を開こうと思い立った。会場は世田谷区の施設を借りることにして、区の広報紙で「六〇歳以上のパソコン初心者」に参加を呼びかけた。講習に使うコンピュータや周辺機器など機材の貸し出しや講習のお手伝いはNTTが協力してくれた。

NTTで福祉用の通信機器の開発に携わっている米川達也さん(四四)は、この最初の講習会の時からの協力者だ。「アメリカに勤務していた時に、『シニアネット』という高齢者のパソコンネットワークがあるのを知りました。めざすところはこの会も『シニアネット』も同じ。パソコンを使ってお年寄りが生き生きと暮らすお手伝いができればと思っています」と話す。

第一回目の講習会は大成功だった。定員四〇人のところに一五〇人も詰めかけて、急きょ二部制にし、それでも入りきれない人のために別の日を用意するという盛況ぶりだった。この時を振り返って、大川さんは「年を取っても時代についていきたいというお年寄りの熱意をものすごく感じました」と言い、米川さんも「お年寄りこそ最先端の技術に触れて、それが生み出す便利さを享受するべきだと思います」と話す。

 

 

 

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