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特徴は地域密着、小規模、多機能である。地域社会から遊離してきた特別養護老人ホームや病院など旧来の施設介護の「命は助けても人生は救わない介護や医療」に失望して地域に飛び出し、お年寄りが「楽しい、よかった」と言ってくれる場を行政や企業を頼りにせず自らのリスクで実践してきた貴重な体験だ。病院を辞めて「いつでも、誰でも、利用したいときに利用できる」施設をつくった沢向さん、OLを経てなった特養職員を辞めて宅老所をはじめた下村さんらの言葉から反骨と自立の気概がほとばしる。

続いて、大学教授、行政マン、医師らが「宅老所・グループホームとは何かを整理する」基調ディスカッションに。ここでは全国の宅老所・グループホームに関する初の全国調査の一端が披露された。全国の宅老所・グループホームは一九九〇年代後半から急速に増え九八年には一二〇〇になったという。その半数は地域の住民組織が立ち上げ、残り半数は行政や法人によるもの。約半数はデイサービスや「居住」を兼ねるなど多機能タイプ。一日当たりの利用者は平均五人から八人と小規模で地域密着・多機能という特性を持つ。

立ち上げの動機は「施設内で工夫したが、理想的な介護に至らず、生活の場として」など。「その人らしさを大切に」「普通の暮らしを提供する」「家で暮らすような形での生活支援」など家庭的なケアを心がけている。ただ半数近くが資金繰りなど金銭面での課題を抱え、独自のケアを続けるためのスタッフ研修をどうするかなど悩みは少なくない。また住民組織の半数程度がNPO法人化を、六割程度が介護保険の指定事業者になることを考えている。

 

 

 

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