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割高感のある利用料金と不安定な運営がネック

 

自分が住み慣れた地域で、ともに助け合いながらふつうの生活を送ることができれば、高齢者にとってこれほど自然で、心安らぐことはないだろう。だがその一方で、こうした宅老所の多くは、法人格を持たないために公的補助が受けられず(少なく)、そのために利用料は公的施設に比べて割高となっているのもまた事実だ。利用料が高ければ、当然のことながら経済的な負担から通えない利用者が出てくることは言うまでもない。

「たとえば、デイサービスセンターE型(定員八人。痴呆性老人毎日通所型)などの国庫補助の場合の利用者負担は、一日五〇〇円から八〇〇円程度(昼食と入浴を含む)がほとんどなのに対し、公的補助(委託)を受けていない民営の場合は二〇〇〇〜三〇〇〇円強にもなります。しかも、利用者の増減が激しいにもかかわらず、その利用料のみの収入に頼らざるを得ないために宅老所の運営は慢性的な赤字状態で、スタッフの給与すら満足に払えないところも多いのです」(前出・池田さん)

「後援者からの寄付やバザーなどがなければ、とても運営を続けていけない」「送迎に利用する車を持ち出しで買った」「職員の報酬を積み立て、それを取り崩しながら赤字補てんをしている」といった声は枚挙にいとまがない。にもかかわらず、公的サービスよりも高い利用料金を取っていることで「儲けている」と誤解されやすいというから、これではとてもやりきれまい。

ただ、こうした動きが広がりを見せる中で、徐々にではあるが市町村からの委託を受けたり、助成金をもらえるケースも増えてきた。たとえば栃木県の場合は、施設の開設段階から補助を受けられる独自の「高齢者デイホーム事業」を一九九四年から実施。

 

 

 

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