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明治の遺物、設置法の権限規定がもたらした弊害

 

加藤 役人の意識がなかなか変わらないもうひとつの理由には、国民の側の甘えもありますね。実際に役人と直接やりとりする人は限られてはいますが、彼らは最後は役所が仕切ってくれると思ってるところがあるんですよ。

堀田 たしかにそうですね。

加藤 何か起きるとどの役所の監督だ、責任だと。役人だって普段は規制緩和だとか言いながら、何かあったら俺のせいにされたらたまらないと過剰防衛にもなりますね。それを許している一番根っこにあるのが、各省庁ごとにある設置法の権限規定です。これを撤廃するためかなり私は力を注いできました。

堀田 (うなずきながら)加藤さんのところでイニシアティブをとられて、権限規定が見直されることになって、大変な功績ですよ。

加藤 本来、官庁の権限というのは、個々の法律に基づいて執行されるというのが、法治国家、世界共通のあり方です。ところが日本では、各省庁ごとの設置法が個別の法律を包み込む形で、広範かつ抽象的な権限を与えている。明治時代、天皇あるいはそれに代わる官僚がすべてを仕切ってきた仕組みが、今でも、そのまま続いていて、それを法律にしたのが役所の設置法の現実です。

堀田 法律があとから追い付いてきて、法律に基づいて行政が行われるという法治国家の真の形が取られてこなかった。それがいわば行政指導の温床にもなっていたわけで、設置法に基づく権限が撤廃されれば、そのよりどころもなくなります。

加藤 民主国家といわれる国で、官庁にこうした包括的な権限を与えている例は日本くらいでしょう。もちろんすぐに行政側の意識が変わるとは思わないけれども、でもこの権限規定を変えることで一〇年、短ければ五年くらいで役人も国民も意識が変わってくると期待しています。

 

 

 

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