これらの手法はいずれも情報システムの導入効果を定性的・定量的に分析し、コストやその他の評価基準と照らし合わせることにより、企業の目標である収益性という観点で評価を行うものであり、企業と顧客の接点となる情報システムの導入による顧客数の増加や商品・サービスの売上向上という要素を取り入れることが可能である。
(2) 官民接点情報システム整備・運用事業への適用
官民接点情報システムという観点で見た場合、企業のように情報システムの導入によるCS向上(既存顧客の維持及び新規顧客の獲得)効果を「売上増加」または「導入しなかった場合の顧客喪失(売上喪失)」として開発コストと比較評価することは困難である。これは、官民接点情報システムの開発・運用費用は主として税金によりまかなわれるが、CSの向上により行政サービスを利用する国民が増加したとしても税収が増加する訳ではないためである。官民接点情報システムの評価対象は、「利益」ではなく、以下のように設定することが可能と考えられる。
○ 国民満足度を踏まえた官民接点情報システムの評価のイメージ
官民接点情報システム導入により、行政側においては事務の合理化やペーパーレス化、職員の情報リテラシー向上、情報共有効果等の効果、国民側においては情報リテラシーの向上、ワンストップ・ノンストップ行政サービスによる利便性の向上等の効果が期待される。システム整備事業に対する評価を行う場合には、これらの想定効果及び整備・運用予算を国民に提示し、パブリックコメントを収集して事業の事前評価を行うことが考えられる(図4-2参照)。
また、運用開始後には、国民側の期待効果に対するCS評価、行政機関側の期待効果に対する自己評価を当該官民接点情報システムの総合評価と定義し、当該システムの開発・運用コストと対比させ、事業全体に対するCSについて、国民に調査を行うことが考えられる(図4-3)。
なお、官民接点情報システム導入における国民側の期待効果については、行政機関と異なり、利用者数はあらかじめ定まったものではない。利用した国民にとって高い効果が得られたとしても、利用する国民の数が少なければ効果が高いとは言い難い。従って、運用開始後の評価については、当初の想定利用者数に対する実際の利用者数の割合を併せて評価する必要がある。また、企業のような減価償却の概念を評価に取り入れない場合、効果と対比するコストは大幅に下がるが、それでもコストに見合う導入効果が得られていない場合には、システムの廃棄も含めて検討する必要があると考えられる。